力学④ 「見えるもの」の定義

力学

物理量は「計測するもの」です。数字+単位で記述したいのです。そのため、物理量の定義は「どのように計測するか」を表したものになります。

また、他の、測定可能な物理量との関係で定義する場合は「数学的な表現」をします。

まずは「位置」。
これは前回の記事の通り、適当な基準点からの距離を視覚的に計測したものです。
たしかに、距離を数字と単位(メートル)で表したものですが、概念的には、「物体の存在」を示しています。位置変化を知りたくなるほどに興味を惹かれる物体そのものの存在を表す物理量で、「位置」を計測したくなる物体がなければ、そもそも力学を使う理由がなくなってしまいます。
ちなみに、学校では「距離」のほかに「道のり」という単語も習います。これらの物理量は、いずれも、適当な基準点から測定した物体までの長さで、「位置」の仲間です。

次は「速度」。
日本語での定義は「位置の時間変化率」です。位置と違って、一定時間の経過観察が必要ですが、位置の時間変化は目視することができます。目視できるということは、現象をイメージできるということなので、目の前に物体があると想像してみてください。もし、2.0 秒間に3.0 m動く物体があったとすると、式での表現は

3.0 m = 1.5 m/s × 2.0 s

です。相当な速さで動く謎の物体ですが、この式の1.5 m/s が速度です。
この式を文字で書きます。位置を \(x\) 、時間を\(t\)、速度を\(v\)とすると、
\( \Delta x=v \times \Delta t \)
となります。ここで、位置 \(x\) と時間 \(t\) の前に \(\Delta \) が付いているのは、「区間」という意味です。「2.0 秒間に3.0 m動く」というのは、「区間タイム 2.0 秒」の間に、「3.0 mの位置変化」があるということなので、位置と時間を両方とも区間にしています。

さて、今、注目しているのは「速度」なので、「 \(v =\) 」の形に変形します。両辺を \(\Delta t\) で割って、
\( v = \displaystyle \frac{\Delta x}{\Delta t} \)
となります。この式が速度の定義を(世界共通の科学系言語である)数学で記述したものです。

そもそも、「速度」は日本語で定義すると「位置の時間変化率」でした。
変化率であるので、数学的な表現でも、右辺の
\( \displaystyle \frac{\Delta x}{\Delta t} \)
は「位置変化\(\Delta x \)」を「区間タイム\(\Delta t \)」で割り算した、変化率になっています。

また、使いやすさを考えて、「区間」を「微小区間」に変えると
\( v = \displaystyle \frac{d x}{d t} \)
となります。
数学の記号のルールでは、それなりに大きさのある区間は「\(\Delta \)」で表しますが、微分や積分が使えるぐらい区間を小さくする(ゼロの極限をとる)と「\(d\)」になります。

高校までの物理では微分と積分を使わない謎のルールがあるので、教科書の定義は「\(\Delta t\)」で書かれていると思います。しかし、微積は非常に強力な道具ですので、学習者は謎の誰かに忖度せず、微積が使える形での定義で覚えていればよいかと思います。

ちなみに、微小区間表記にしておくと、
\( v = \displaystyle \frac{d x}{d t} \)
を元の形に戻して
\( d x = v \times d t \)
\(x\)は微小区間なので、微小区間を足し合わせ、それなりの区間に戻し
\( \Delta x = \int d x = \int v \times d t \)
となり、これが位置と速度の関係を表す積分表記です。
ここで、積分記号の\(\int \)ですが、これは Sum(足せ)のSです。

…長くなりましたが、結局、「速度」は、視覚的に測定可能な「位置の時間変化率」であり、
\( v = \displaystyle \frac{d x}{d t} \)
です。

…「見えるもの」の残りに、「加速度」、「大きさ」、「時間」がありますが、それは別ページに書きます。

ところで、数学は、全世界共通の、自然現象を表現するための言語です。数式は、現実世界か仮想世界かに関わらず、何らかの現象を表しています。つまり、数式は「読むもの」です。
数学は全世界共通言語ですが、やはりヨーロッパ方面で発達した関係で、ヨーロッパ系言語の特徴があります。微小区間を表す\(\Delta \)ですが、これは形容詞です。たとえば\(\Delta t\)は時間を\(\Delta \)が修飾していて、「ただの時間\(t\)」ではなく、「時間区間」になっています。ヨーロッパ系言語では形容詞は名詞の前に付きますので、\(\Delta \)が時間\(t\)の前に付いています。
同様に、積分記号の\(\int \)ですが、「足す」という動詞です。積分表現は「足せ」という命令文なので、式の一番前に\(\int \)が付いています。やはりヨーロッパ系言語です。


ちなみに、数学では式の変形を行いますよね。式の変形は、現象の見方を変える行為を表します。式が簡単になるということは、現象の理解が容易な視点が見つかった、ということです。

コメント