熱物性③ 非平衡の熱力学

熱物性

熱力学は「平衡状態」での系の状態、あるいは、「平衡状態間のエネルギー変化」のみを扱う理論です。

「平衡状態」は時間的に状態が変化しないことが要求されますので、

熱力学で扱う物理量の中に、「時間」は入っていません。

でも、時間変化を扱いたくなるのです。

熱の移動、つまり加熱や冷却はすぐには終わりません。
熱は「伝熱」、「対流」、「放射」などで伝わりますが、いずれも徐々に温度変化します。
それに伴い、物体内の状態も、徐々に変化します。

時間変化しているところでも熱力学を使いたい!

とはいえ、完成された理論である熱力学を拡張することは、科学の文化として許されません。

そのため、熱力学を内包する形で、新しい理論を作るしかありません。

その試みが「非平衡の熱力学」です。

たとえば、比熱に時間依存性を持たせます。

比熱は、物体の温度を1 ℃上昇させるために必要な、単位質量当たりの熱量です。
物体に依存する、物性値です。
熱力学で定義される物理量ですが、当然、時間依存性など考えられていません。

それを「非平衡の熱力学」では、時間依存性のある「複素比熱」として拡張します。

物体の状態が時間的に変動し、それに伴い、温度上昇に必要な熱の量も変わる、という現象を表す物理量です。

ただし、「非平衡の熱力学」は「熱力学」を内包しているべきなので、変化にかかる時間が無限大になる、つまり、低周波極限の「複素比熱」は熱力学で定義される「比熱」と一致すべきものです。

むやみやたらと物理量を増やすのは、自然を簡単に解釈するという科学のルールに反します。
ですが、不思議さの解釈のために必要な物理量を、既存の理論を内包する形で導入していくことは、科学の発展には必要なことです。

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