熱力学⑧ マクロな視点とミクロな視点

熱力学

熱力学を学習、および使用するために強く意識すべきことがあります。

熱力学はマクロな視点で世界を理解する理論です。絶対にミクロな視点を持ち込んではいけません。これは絶対のルールです。

マクロとは「巨視的」という意味です。マクロな視点では、原子分子の集団をひとつのものとして扱います。集団とはアボガドロ数程度のものが集まったものです。

一方で、ミクロとは「微視的」という意味です。ミクロな視点では、原子分子ひとつひとつを意識します。

熱力学は熱の移動をマクロな視点で扱う学問なので、原子分子を考えてはいけません。
高校物理の教科書で例として挙げられている
●容器に閉じ込められた気体を温めるとか、
●ピストンを圧縮するとか、
●金属球を水槽の中の水に入れるなどは、
すべて巨視的な視点で観測される現象です。

もちろん、ミクロとマクロは互いに関連があります。

気体分子が容器分子にぶつかることで「圧力」が発生します。
分子運動が激しくなることが「温度」の上昇に対応します。

ただし、頑なにミクロを考えないことが、熱力学の美学です。
あくまで、「圧力」は容器の膨張や圧縮を促す作用として、
「温度」は熱いとか冷たいなどの指標として理解し、それ以上のことには踏み込まず、シンプルに考えなければなりません。

自然科学の中で、「古典力学」と「熱力学」だけが、「完成された理論」であり、
その中でも「熱力学」はもっとも美しい理論と言われます。

美しいと言われるのは、すべて我々の日常で観測できる(マクロな)物理量だけで構成されている、ということも理由です。

ところで、ミクロとマクロが互いに関連しているのは事実です。そのため、ミクロとマクロを結ぶ理論が(熱力学とは別に)存在します。それが「統計力学」です。

統計力学で扱われる現象の例のひとつが「気体分子運動論」です。気体分子運動論とは、容器の内壁に気体がぶつかる現象を運動量を用いて理解する手法で、圧力や温度の概念を分子運動と結びつけます。

すべてのマクロな現象をミクロな現象と結びつけて考えるのは大変です。その大変な部分は「統計力学」として切り捨てて分離し、マクロな現象に特化して理論を構築しているので、熱力学は美しいのです。

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