今回も運動方程式の話です。力学では、加速度は力という作用によって発生する、と解釈します。
たとえば、電車や車に乗っているとします。これらの乗り物が急ブレーキをかけると、中の人は前に「のめって」しまいます。急ブレーキがかかっている乗り物は「負の加速度が発生している状態」です。中にいる人にも負の加速度を生じさせる力が伝わらないと、乗り物に対して相対的に前に進んでしまいます。
運動方程式は、乗り物と中の人との関係だけに適用されるわけではありません。
我々が体を動かすとき、体の各部分で同じように力のやり取りが発生し、加速度が生じています。
座っている人が立ち上がり、飲み物を取りに行くとすると…移動中はいろいろな方向に、いろいろな大きさの加速度が発生します。加速度が発生するたびに、脳や胃や腸などは押されたり引っ張られたりして体全体の加速度と同じになろうとします。
もし、体の一部の加速度が、体全体の加速度とずれてしまったら…
その部分は置いてけぼりになってしまいます。通常、そのようなことは起きません。我々の体はそれなりに頑丈に作られています。
しかし…
血管が弱くなっている高齢者や、まだ体の構造が安定していない乳幼児などは、この内蔵に働く力により「体内が損傷する」ことがあります。
高齢者が転倒などにより頭をぶつけた場合、頭蓋骨内で血管が切れることがあります。それにより出血し「慢性硬膜下血腫」になることがあります。

頭蓋骨内の脳の周辺には膜があります。脳の表面を覆う「軟膜」、髄液の外側に「くも膜」、骨に張り付いている「硬膜」です。

「硬膜下」とは硬膜の内側、くも膜の外側のことです。「血種」は血の塊のこと。つまり、硬膜とくも膜の間で出血し、塊になった血が「硬膜下血腫」です。ゆっくりと出血し、ゆっくりと血液が固まる現象が起きるため、ゆっくり症状が現れるという意味の「慢性」を付けて、「慢性硬膜下血腫」です。

乳児の場合も、頭部に衝撃を受けると頭蓋骨内で出血する場合があります。ニュースなどでは「揺さぶられっ子症候群」と言われることもあります。
高齢者でもなく、乳幼児でもない場合でも、事故などで強い衝撃が加わった場合は頭蓋骨内で出血することがあります。ぶつかった部分の損傷を直撃損傷といいますが、それ以外の箇所で発生する、急激な加速度変化による損傷を「対側損傷」といいます。
やはり、我々の体の中でも、力学で解釈されるような現象が起きています。
運動するということは、体内にいろいろな負荷が発生しているということです。
力学を学習することにより、体内で発生する力を想像できるようになります。

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